2012年1月14日

肥後物産通信1月号「昨年の価格高騰について」

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
平成23年度の熊本畳表相場は7月から値上がりを続け、11月には最高価格となりました。
急激な相場高騰により、畳店様におかれましては、工事単価の値上げをお考えになるなど、お困りな点があるのではないかと思います。
 今回は工務店、施工主様に、熊本畳表価格の値上がりを少しでもご理解を頂だければと思い、昨年の価格高騰の背景についてまとめてみましたので、ご説明の際には参考資料としてご使用頂ければと思います。
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【昨年の価格高騰について】
今回の価格高騰の背景は様々な要因が重なって起こったように思われますが、基本的には、「生産農家の減少と2年続きの不作により、畳表の供給が需要以上に少ない事」が主な原因と思われます。
平成23年の1月頃は、22年産が不作だったために、早くから「今年は3月で原料となる"い草"が切れる農家が出てくる」と言われていました。<図1>のグラフは平成22~23年のJA市場における出品の推移を比較したものですが、実際に23年4~7月と9~10月における出品枚数が前年比20~30%少なくなっています。この大きく落ち込んだ出品時期のあとに品薄状態となり、大きな相場高騰が起きたように思われます。
<図1>
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 現在の高値となって、お客様からは「20年前の相場になったね。」とか、「昭和50年代や昭和60年代には、飛込(トビコミ)で1000円を超えてチャボで1500円した時期があった。」など過去の状況を聞かせて頂く事がありました。
 <図2>は昭和51~58年の9月時における相場の推移です。当時はまだ、国産畳表が主体であったことから、短いイ草を使用した飛込やチャボといわれた下級品の生産が行われ、1反(10a)当たり約600枚の生産がありましたが、その後中国産の輸入が増え、飛込やチャボの中でも下級品は採算が合わず短い"い草"は廃棄され、これらの製品は姿を消し1反(10a)あたりの生産枚数が現在約350~400枚となりました。
<図2>
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1反(10a)当たり600枚から350-400枚と、昭和の頃の約60-65%の生産量で同じ収入を上げなければいけない構造となりましたが、平成に入ってからは住宅構造等の変化による畳表の需要減と中国産との競合の中で再生産価格に届かず、生産農家戸数は年々減少してきました<図3>。参考まで農家戸数は平成元年を100%とすると平成23年度で11%となっています。
<図3>
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今回のような急激な相場の変化より、出来れば今後は安定した相場を望むものですが、一方で、生産農家にとって再生産出来る価格帯は必要と思います。現在、生産意欲がでてくる反収は1反(10a)当たり80万円と言われています。今回高値となった市場落札平均単価が1980円で、1反に400枚織れるところで約80万円となります。この相場が維持出来ず、もし平成22年度までの相場であれば生産農家の減少は更に進むものと思われます。
 急激な品薄と相場上昇が今後どのように展開するか不透明な面がありますが、今後の生産見通しは、23年春より更に早めの草の消化が進む可能性もあります。それは、新草の切り替わり時期において、平成22年産は10月から新草が始まった事に対し、平成23年産は8月から始まり、約2ヶ月早かったためですが、約1割程度重量が薄く織られており、この分が早めの草の消化を少し遅らせるかもしれません。
 一方で国産需要に関しては、急激な値上がりにより中国産への移行がみられ、どの程度の移行かによって需給バランスが変わり相場に影響してくると思われます。私たち産地サイドの生産者や流通関係業者は、今回の高値に驕ることなく、品質向上に努め長期的に再生産価格が支持されるよう努力していきたいと思います。

投稿者西:2012年1月14日 08:40

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