2003年12月26日

肥後物産通信12月号 情報発信の原点について

【産地状況】
植え付け作業も一段落し、市場への出品は少し増えてきましたが、初荷や年
明用の在庫としての手配が予想され供給不足気味という雰囲気となっていま
す。市場は今日26日までとなっており、年明けの初市は7日からとなって
います。
また収量が少なかったためか、原草の消費も早いようで、今後は、中間、早
刈りの草(在来種等)が増えてくると思います。

今年は残暑の影響からかヒノミドリ苗の立ち枯れが目立ちましたが、農家間
で助け合い作付面積としては、前年並に近いレベルと予想されます。
(作付面積については次号でお知らせしたいと思います)

【1年を振り返って】
肥後物産通信を発信し始めて1年になります。皆様にはこの1年お世話にな
りました。色々なご意見を頂き、産地とユーザーの皆様とで品質面や価値観
について対話できた事は大きな収穫でした。
ここで再度、なぜこの対話の必要性を感じ、定期的な情報発信を始めたかの
原点について再度報告させて頂きます。

■情報発信の原点について
▽経緯
平成11年までは、熊本では約9割以上が泥染の時に着色剤を入れて生産さ
れていました。普通の畳表といったらいわゆる水性ペンキで着色されたもの
であり、無着色表はごく珍しいものでした。

それまで、まじめに土作りをして粘りのある草を作っているが無着色の農家
の品物は、色が悪いという事でなかなか値段が通らず、逆に草質そのものは
落ちても、見た目のよいものが評価され、草質のよいものを作る農家が、そ
の努力の割に評価されていませんでした。そこで特に以下の3点について疑
問に思いました。

1、このままでは熊本には草質の良いものを生産する農家がいなくなるので
はないかという危惧と、業界としても、品質の良いものを生産する農家を失
う事は、マイナスではないか?
2、もし私たち産地の者が自宅の畳替えをしようと思えば、無着色の畳表を
使います。様々な薬品や水性ペンキなどがついた敷物などの上でゴロリとは
誰も望んでいないのではないか?
3、もし消費者が農家並みの知識をもっていれば、ほとんどの人が無加工の
畳表を望むのではないか?また少し高くても品質の高い方を選ぶのではないか?
このように考えました。

構図としては、こつこつと土作りをして品質の良いものをつくっても、色が
悪いという事で適正な値段にならない生産者と、一方、適当で軟弱ない草を
つくり、最後に泥染で水性ペンキを入れて、悪いところを隠して見た目の良
い商品に仕上げ、効率よく収入をあげる生産者。正直者が馬鹿を見る構図で
した。

「見た目をごまかす者が栄え、正直者が姿を消す」。
商品に例えると「悪貨は良貨を駆逐する」これを止めたい。これが肥後物産
通信を始めた原点です。農家と同じほどの製品に関する情報量があれば、も
っと本物や良いものが支持される仕組みに変えられるのではないかと考えます。

良いものを伝える競争するのではなく、いかに安いものを良く見せかけるか、
下のクラスを1つ上にごまかす技術が高い方が、競争上有利という競争ルー
ルでは、ユーザーの皆様に産地として良いものは生み出せないと考えました。
産地内部では、本物が正当に評価されるルールの前提で競争を行うべきと考
えます。競うことは、スポーツの試合のようにお互いの技術、農家レベルで
は例えば品質向上、産地問屋レベルでは調達/選別/品揃/スピード/好み
への対応/それらのシステム/経営能力などを磨き、競争すればするほど自
らを高め、感動を産みだすほどのサービスを創造すると思います。

◎感謝
これらの主旨で始めたこの1年でしたが、地域によっては材料商様のご理解
とご協力により、その地域の畳店様にも発信する事が出来ました事に感謝し
ております。
また色々なご意見やご質問を頂き、ユーザーの皆様と品質面や価値観につい
て対話できた事は大きな収穫でした。

年明け早々には、各地区の生産者の方々と勉強会を行い、産地としてユーザ
ーの皆様に良いものを提供できるよう研究したいと思います。
皆様には、来年も様々なご意見を頂きながら、良いものを生み出す産地へと
ご指導頂ければ幸いです。良い年をお迎えください。

投稿者松永:2003年12月26日 11:54

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