2004年8月12日

肥後物産通信8月号 早刈りの質問

【産地状況】
産地では例年になく降雨が少なく、猛暑続きとなっておりま
す。新草の収納を終えた生産農家では畳表の生産に取り掛か
りましたが、古草の原草が少ない事から、新草の選別に追わ
れているようです。また、猛暑の影響から畑苗の立ち枯れが
心配され、例年はお盆過ぎに取りかかる8月苗を現在行われ
ている所も目立ちます。
農協市場出品枚数は前年対比2割減と少ない中、すでに新草
の割合が8割程度となっているようです。草質は堅く、昨年
と比べるとしっかりした表の仕上がりに見受けられますが、
まだイ草と染土のなじみが浅いようで色変わり(早い退色)
の心配があるように思います。
新草の出回りは例年より早くなると予想されますが、ひのみ
どり草については高品質を保つために生産が本格化するのは
草の色が落ち着く9月からと思われます。

【頂きました質問より】
◆Q2.一般に早刈りの草が劣ることが分かっているのであ
れば、なぜ収穫を遅らせないのでしょうか?あるいは、早刈
りを始めから意図した栽培が行なわれているということでし
ょうか?(6月号に早刈りの圃場と遅刈の圃場の写真が載せら
れていたので)であればそれは何のために?

A.熊本県のイ草の刈り取りは、だいたい6月後半~7月後半
までの一ヶ月くらいで、約10日間隔で早刈り、中間刈り、遅
刈りとなっています。ひのみどりに関しては、本来7月5日か
ら7月15日までに刈り取る品種として導入されましたが、導入
初期の高値のため、6月刈り取り分もひのみどりを収穫したと
ころがあり、これらが耐久性に問題を起こし、評価を下げる
ことにつながりました。このような反省から今年度は実を充
実させるために少なくとも7月1日以降の刈り取りをするよう
熊本県が指導しています。

ご質問にあります、収穫を遅らせる事は今後のテーマとなる
かもしれません。
また、写真を分けたのは、早刈りと遅刈とで品質が違うため
に掲載させて頂きました。

◎「なぜ収穫を遅らせないのか」これまでの背景
・一戸の農家の一日に収穫する量は、乾燥釜に入るイ草の量
 しか刈り取りがでません。
・大きい釜を持っている所で10a入る釜もありますが、7aぐ
 らいの釜が多いと思われます。
 『乾燥釜の写真』

・イ草農家の作付け面積は平均140aで、一日に刈り取る面積
 は7aとすると約20日間はかかります。
・イ草は梅雨の間が一番成長し(熊本県の平均梅雨期6/10~
 7/20)それ以降は日中の日差しが強く(イ草は日中の気温
 が約30度以上になると成長を休止する)先枯れやヤケが、日
 を追うごとにひどくてなって品質が悪くなります。
・またイ草刈りと平行して、イ草を刈り取った田圃に10月中
 旬収穫予定の稲穂を植えます。イ草刈りを遅らせて稲植え
 が遅れると、稲穂が育たず10月の収穫に間に合わないとい
 う背景もありました。

ただ農家によっては7月10日から7月28日ぐらいの期間に刈り
取るところもあります。非常に多くのノウハウと手間隙がか
かり、生産数量も少なめで、その分ひのみどりの中でもトッ
プクラスの高級品として流通しています。ただこのように熊
本県は高級品を生産する産地を目指して、ひのみどりを生産
してきましたが、高値の品が主流となり、また一番の需要期
に供給できなかったという反省が私たちにはあります。高級
品だけでなく、普及品もバランスよく供給することが、産地
に求められているように思いますと、現在の産地能力では時
期を遅らす事に難しい面があるように思います。

◆前回の質問(着色・樹脂加工)に付随して
お盆前となるこの時期、新草の表は例外なく早い退色の心配
があります。その為、産地(問屋)業者によっては加工処理
を施し、見栄えを良くした畳表も多いと思われます。また、
イ草刈り後で畳表の生産も少ない事から商品価値の落ちた古
物等も加工によって、そこそこの表として流通する時期とも
考えられます。

いずれも、今後品質と供給とをバランスよくすすめていく上
で、ご質問の内容は今後のテーマとなると思います。
率直なご質問ありがとうございます。

投稿者松永:2004年8月12日 11:31

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2004年8月11日

乾燥釜の写真

乾燥釜の写真(約10aのイ草が入る釜)
kansougama1.jpg kansougama2.jpg

投稿者higo:2004年8月11日 17:51

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