2004年5月20日

肥後物産通信5月号 減農薬、有機栽培について

【産地状況】
日増しにイ草の成長が感じ取れる時期となりました。
早いところであと1ケ月もすれば新草の刈り取りが始まります。
市場出展も農繁期の影響から少なく、一日平均1万枚前後となって
います。現在農家では外仕事(くい打ち・網張り)を終えたところ
から刈り取り前の最後の生産となりましたが、すでに上物を織り尽
くされた農家が多く、中級品から下物の製織が主のようです。

この時期になると、どうしても秋口の表に比べ草質の低下が感じら
れます。前回も取り上げましたが着色加工等によって畳表の見栄
えは格段に良く見せる事ができますが、耐久性など不安な面がある
かと思います。そんななか一部の優良農家では草質が落ちる田圃、
又は早刈り草に切り替わると草の選別を上げ、一段長い草を使用さ
れたり、重量を加える事で畳表の品質を落とさないような努力をさ
れています。

また、イ草の生育は順調ですが朝晩の冷え込みからか花の付きが多
いように見受けられます。

【頂きました質問から】
一般消費者の農業生産物における安全性の意識の高まりから畳表に
ついても同様に、より安心して使用できる畳表が欲しいなどの問い
合わせが増えているのではないでしょうか?
今回、配信させて頂いてる方から頂きました質問より、減農薬、有
機栽培について取り上げることにしました。

*有機農産物及び特別栽培農産物に係わる表示ガイドライン

「減農薬」について
1.Q:農薬は何のために使うのか?・・・・目的は何?
   (いぐさの病気対策?害虫対策?)
 A:イ草栽培に使用する農薬は、主に、害虫対策に殺虫剤、雑草
   駆除に除草剤を使います。

2.Q:現在の農薬使用量は、使用の上限規制もしくは自主規制値と
   かあるのか?
 A:畳表(イ草栽培)に限らず、農産物の栽培においては国、又は
   その地域の自治体が認めた登録農薬を使用する事になります。
   熊本県が定めているイ草栽培に関する農薬使用基準に基づき
   農協等が指導されていますが、強制ではないようです。
   以下は、ある農家の農薬使用量です。農薬の使用量は農家に
   よって違います。
    ▽農薬使用量

3.Q:製品として、(お客様に届く時に)規制値があるのか?
   また、実情どれくらいのレベルになっているのか?
 A:野菜等の農産物とは違い、畳表には規制値はないようです。
   また、残留農薬については、何軒かの生産農家の方が調べら
   れたようですが、検出下限値未満との事でした。
   これは、人体に害するレベルでは検出されない事を示します。
   無着色・着色表に限らず、残留農薬の点からは人体に害する
   影響はないといえるのではないでしょうか。
   
4.Q:農薬は人体にどんな影響をあたえるのか?
  
 A:農薬自体が体には良くないということは周知の事実だと思い
   ます。ただ、製品化された畳表に関してはQ3で書いた通り、
   残留農薬はほとんど検出されていませんので、人体への影響
   は無いと思います。

5.Q:減農薬とは、どれくらい農薬使用量を減らしたものを減農薬
   というのか?
   これをすることで、何がどれくらい変わるのか???
   (減農薬は人に対してではなく、いぐさの健康状態を良くす
   る(耐久性やつや出し効果のためですか?)
 A:減農薬とは、その栽培地域慣行の半分以下の農薬で栽培され
   た作物をいうようです。畳表の品質に関しては、通常の表と
   変わらないように思います。 
  【参考】
   一般の農家は、栽培における除草作業に、除草剤を使い2~3
   日で終わらせますが、減農薬栽培となると4月から5月にかけ
   一ヶ月以上、手作業で雑草を取る事になります。また殺虫剤
   を使用しない代わり細かな水管理(必要以上に水を使用する
   と根腐を起こしやすい)やニンニク液・キトサン(生物資源)
   等を使用され栽培されているようです。   

6.Q:減農薬の表示は、誰が保障するのか?
   (第三者の公的機関? 農家の方の自己申告?)
 A:現在のところ、栽培当事者の自己申告が多いようですが、
   第三者機関のオーガニック協会が認定する「特別栽培農産物」
   熊本県が認定する「エコファーマー」というのもあります。

【安心への視点】
はじめに書きましたように、一般消費者の農産物における安全性
の意識の高まりから、より安心して使用できる畳表の要求に対して、
ごく一部の農家が大変な努力をされており、除草の時期は、田んぼ
の手作業による草取りに追われ、畳表は週に20~40枚しか生産
できない状況となります。これが生活の苦しさと同時に、「120枚
揃うのに色が揃わない」等の欠点もあります。

私たちも敬意をもってこの方々とお付き合いさせて頂いておりますが、
規定の農薬を使用しても「検出下限値未満」という残留農薬について
より、成分の分からない着色剤や様々な加工に使われるボンド(接着剤)
等の加工表がどうなのか疑問があります。
これらが市場全体の8~9割を占めている(国産は市場の2~3割ですが、
そのうちの約半分が無着色)事の方が、「減農薬」より先に解決すべ
きことではないかと考えますが、皆様のご意見をお待ちしております。

・有機栽培については6月号に載せたいと思います。

投稿者松永:2004年5月20日 11:38

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2004年5月19日

有機肥料の種類と使用量(一部の高級畳表生産農家)

1、元肥(一般のい草農家はあまり入れない)

・バーク堆肥(木の皮を粉砕したもの-------1t強/反
・グアノ(リン酸肥料、鳥のフン)---------30kg/反

2、ぼかし肥料(一般のい草農家は入れない)

(綿実粕45%、魚粕45%、ふすま10%)-----300kg/反
<ぼかし肥料の有機成分>
N(チッソ)---5.5~6%
P(リン酸)---5%
K(カリ)-----1.5~2%

3、有機質肥料A(市販品、一般にい草農家に使われる)
(有機質肥料とは、有機質が含まれる肥料)60kg/反

<有機質肥料の有機成分>
N(チッソ)9%(このうち4%が有機を使用したN、残り5%は化成肥料)
P(リン酸)3%(化成肥料)
K(カリ)7%(化成肥料)

4、有機質肥料B(市販品、一般にい草農家に使われる)
(有機質肥料とは、有機質が含まれる肥料)60kg/反

<有機質肥料の有機成分>
N(チッソ)12%(このうち3%が有機を使用したN、残り9%は化成肥料)
P(リン酸)3%(化成肥料)
K(カリ)10%(化成肥料)

5、化成肥料(市販品、一般にい草農家に使われる) 100kg/反

N(チッソ)13%(化成肥料)
P(リン酸)4%(化成肥料)
K(カリ)13%(化成肥料)

*上の1、2が一般の農家が入れない肥料であり、3~5は一般に使われているようです。


有機肥料による畳表のメリット


農薬の種類と使用量

農家が農薬を少なくすると周りの田に迷惑をかけてしまうために農薬の使用量は一般に使われている量と同じになります。
ただ、農薬を使わない栽培方法の研究を進めており、米はすでに無農薬栽培でい草も近く無農薬で栽培予定。
以下はこの農家の使用量です。

1、殺虫剤(シンクイ虫用)

・オフナガーロ(粉剤) 4kg/反
・アルフェート(粒材) 4kg/反
・パタン   (粒材) 4kg/反
・ホルトラン(液剤)100cc/反(1000倍に薄めて使用)
・スミチオン(液剤)100cc/反(1000倍に薄めて使用)
*殺虫剤散布は収穫30~40日前に終了
*約1ヶ月で土から消える。(メーカの資料より)
*殺虫剤については、通常の農家と同じ程度使われています。

2、除草剤

・ロロックス 4kg/反
・シマジン 100g/反  (畑用の除草剤)
*除草剤散布は収穫90日前に終了
*1年近く土に残る。(メーカの資料より)
*除草剤については、90日前に終了するため刈取り作業は雑草を取りながらの作業で3日で終わるところを5日かけて行われます。

投稿者higo:2004年5月19日 18:08

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2004年5月18日

イ草にもエコファーマーの認定基準ができました

1 エコファ-マ-とはどのような人ですか? 
  「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づき、
  持続性の高い農業生産方式を導入するための「導入計画」について、
  県知事が認定した農業者(個人または法人)がエコファ-マ-です。

2 導入計画とはどのようなもですか?
  「県の導入指針」に基づいて導入する生産方式の内容、農業生産の現
  状と目標等、それぞれエコファ-マ-として取り組む内容をまとめた
  計画です。

3 どのような技術(生産方式)が必要ですか?
  「県の導入指針」に基づき、堆肥等による土づくりと化学肥料・化学
  農薬の低減を図るため、次の技術(持続性の高い農業生産方式)の導
  入が必要です。

 

○土づくり
 【いぐさにおける県の導入指針】

    内     容
   使用の目安
   備考     
1.土壌診断に基づく堆肥の施用
2.緑肥作物のすき込み
1.堆肥1t/10a以上 
2.緑肥全量すき込み
1.2は選択項目です

 ※堆肥の種類について、特別な指定はありませんが、土壌診断のうえで、
  バランスのとた資材を施用する必要があります。
 ※ソルゴ-、グリ-ンミレット等前作の緑肥作付けが必要になります。

○施肥
【いぐさにおける県の導入指針】

      内      容   使用の目安
  備考
1.緩効性肥料による施肥量・回数の低減
2.有機質肥料の施用
化学肥料由来窒素成分
40kg/10a以下
1.2は選択項目です。

 ※有機質肥料は、普通肥料で魚肥類、骨粉類、油かす類等の動植物質
  100%の肥料のみでなく、有化成肥料(有機率が30%以上のも
  の)も対象となります。
    (例)苦土有機入化成so28(窒素成分 2kg;有機率 40%)
       → 化学肥料由来窒素成分は1.2kg(2×60%)となります。

○防除
【いぐさにおける県の導入指針】

      内       容   使用の目安
備考
深水管理によるイグサシンムシガの耕種的防除 殺虫剤  1回削減  

 ※地域や栽培方法によるバラツキはありますが、慣行の防除回数を基準
  に削減目標を設定する必要があります
 (耕種基準では、越冬世代3回、第一世代2回の計5回なので、4回以下が目安)

4 エコファ-マ-の認定を受けるにはどうすればよいか?  
  作成した導入計画を添付した認定申請書をお住まいの市町村を経由して
  地域振興局に提出してください。                              

5 エコファ-マ-になるとどのようなメリットがありますか?
  (1)自走式マニュアスプレッダ-等の機械を購入又はリ-スした場合、
     税制の特例措置が受けられます。
  (2)農業改良資金(環境保全型農業導入資金)の貸付けに関し、据え置
    き期間の延長等特例措置が受けられます。

6 エコファ-マ-に認定された後は何が必要ですか?
  (1)導入計画に基づき、目標年に向けて取り組みを行うことが必要です。
  (2)(1)の実施状況や適正な肥料・農薬の使用に努めていることを確
     認するため、毎年、確認報告書の提出が義務づけられています。

   


エコファーマー認定を受けられた
鏡地区、愛鏡会の方々です。
エコファーマー認定を受けられた
竜北地区の上本さんです。
eko.jpg
uemoto.jpg

投稿者higo:2004年5月18日 18:20

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