2013年10月 2日

肥後物産通信10月号 「熊本産地研修前のQ&A No.3」


10月にもいくつかのグループの方々が産地研修にいらっしゃいます。
ご参加ありがとうございます。申込時に頂きました質問に対しての回答です。
この質問のおかげで参加される他の方にもより質の高い研修につなげられると思います。

Q1、普及品のひのみどり糸の畳表の表皮の強度について、在来種や夕凪とは全然違うと思うのですが(さらさクラスは別)、実際のところ、現場ではボロボロのひのみどりを見かける(納めてまだ浅い年数なのに)
A1、強度は基本的に裏毛の実入りに比例すると思います。ご指摘の通り、ひのみどでも高級品は強度はあると思いますが、短いい草の場合は同じ価格帯の在来種や夕凪の方が、一般に強度はあると思います。
ただ夕凪は年によっては、五八糸引などの短い藺草には花が付きやすく、また在来種はヤケが入りやすく、耐久性は良いと思いますが、品行ではひのみどりが良い傾向です。それぞれ特性があり一長一短ですが、施主様の要望に応じた商品が選ばれればと思います。

参考まで熊本の気候では春の冷え込みの時に草がストレスを受け子孫を残そうと花をつけますが、夕凪を沖縄で育てると花はつかないそうです。
夕凪は半分は沖縄の種ですが、沖縄より冷え込みがあるためにこのような事が起こるかもしれません。
推測ですが、逆にひのみどりは半分は宮城県の種なので、熊本の気候の冷え込みは東北ほどないために花がつきにくいのかもしれません。

Q2、染土ですが、あわじ染土と備後染土では、耐久性に違いが出るのか。
A2、染土による耐久性の違いはまだ研究結果など見たことはありませんが、基本的にないと思います。ただ染土の特性として吸放湿機能は備後染土(現在、五島列島産)が優れていると思いますので、数ヶ月経過してからの畳表のコシは出てくると思います。


Q3、あわじ染土にも種類があるのか。畳表をタオルで拭いていると、同じ無着色でも染土に違いがある。
A3、現在の熊本で使われている、ひのみどり専用染土の配合は、備後染土と淡路染土が1対1で配合されています。多くの生産者がこの配合と思いますが、備後染土は価格が高く、生産者によっては、例えば備後染土と淡路染土を1対2や1対3などにされるところもあると思います。このような場合に茶褐色の色から、粘土色が濃い色になるなどの違いが出てくると思います。着色表に見られる緑っぽい灰色の色と見分けがつきにくい場合がありますが、完全に無着色と分かる茶褐色の色が望ましいと思いますので、こちらをお薦めします。

Q4.夕凪のい草のかたさが年々やわらかくなっている気がするのですが、気のせいなのか。
A4:その年の気候によって変わる場合があると思いますが、基本的には変わらないと思います。
夕凪ではありませんが、最近い草の硬さで顕著な違いがあったのが、ひのはるかでした。
ひのはるかの品種に関しては、遅刈用の品種のため梅雨明けの時期が早かった23年と25年産は硬く、梅雨明けの時期が遅かった24年産は柔らかい草でした。
夕凪は早刈用の品種のために梅雨入りの時期の早い遅いで多少違いがあるかもしれません。
また作り手により、収量を多く取ろうとするところは柔らかく、品質重視のところは硬い傾向ですが、同じ生産者の製品を仕入れているのであれば、気候による要因での違いが考えられます。

Q5、在来、夕凪に見られる普及品(安い麻綿クラス)い草の切れや割れはどうにかならないのか。
A5、弊社が出荷した製品であれば大変申し訳ありません。弊社のチェックミスです。
改善案ですが、問屋さんと協議して仕上げの良い生産者の商品を指名で計画的に仕入れらるのであれば、可能な限り対応したいと思います。

参考まで、い切れは基本的に草に粘りが足りないために起きると思います。い草は表皮と灯芯で構成され、灯芯の実入りが足りないと耐久性が悪く、い切れを起こしやすいと思います。夕凪は表皮は硬く一見耐久性はあるようですが、本来は灯芯の実入りが良いものが耐久性に優れていると思います。
(平成5年頃、当時在来種で本間麻Wの最高級品を生産されていた方の実験で、1枚が3Kgある本間麻Wを灯芯の実入りのあるものと少ないものでそれぞれ1枚織られました。実入りの少ないものはい切れがいたるところに発生し、修正のしようがない状態だったのに対し、実入りのある草は数箇所のい切れでした。顕著な違いでした。麻の2本と1枚3kgという製品は基本的に実入りが良くないと織ることすら出来ないと思った次第でした。
また当時、別の本間麻Wの最高級品を生産されていた方の織りが大変良くなぜ良いかを聞くと、粒揃いはもちろん良いのですが、「縦糸に馴染むように表皮は単に硬いのではなく、弾力があるつくりにして、灯芯に実入りがあるい草をつくるようにしている。」との事でした。)

Q6、畳表が畳店に着くまでに、い草の切れや割れを処理しないでほしい。表面にテカリが出て使いにくい。畳店で処理をした方がきれいに処理できる。
A6、この件については特定の生産者名を指定して計画的に仕入れるなど流通経路を問屋さんを交え協議する必要があります。

Q7、原料を中国で仕入れて、織っている農家はいないのか。噂もないのか。
A7、い草農家ではそのような事はないと思いますが、噂があったために全国い生産団体連合会と熊本県い業生産販売振興協会が数回に渡って調査したと思います。
http://www.higobussan.co.jp/nouka/kensakusyusi.html
原料原産地が熊本産でないと入れられないQRコードタグ入りの商品をお薦めしていますが、産地側の徹底が課題です。

Q8、QRコード入りのタグの普及を徹底してほしい。その他のお客様へアピールできるツールの提供もあれば尚良し。肥後物産さんの農家さんデータが書いた紙は、とても良い。あともう少し丁寧に作ってほしい(農家さんの写真の質などを)
A8、QRコードタグの普及徹底とラベルの品質向上は今後とも努力していきます。

Q9、織機の違いによる耐久性の違いはあるのか。
A9、基本的にないと思いますが、織機が絞り目などになっていればい草に粘りがないとい切れを起こしやすいと思います。

以上、私たちの知る範囲内での回答です。私たちの知識は色々な生産者の方から聞いたり見たり、これまでの体験を通しての知識ですので、完全ではありません。更に深い事は、産地研修の際にい業研究所や生産者に直接聞いてみましょう。

投稿者松永:2013年10月 2日 07:25

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.higobussan.co.jp/mt/mt-tb.cgi/627

コメントする