2013年12月16日

肥後物産通信2月号 「2014年2月熊本産地研修前のQ&A」

 昨年に引き続き、品質の見分け方を中心とした2月の産地研修申込時に頂きました品質に関してのご質問をQ&Aとしてお知らせします。

Q1、耐久性の高い表を使いたい場合、沖縄太イをルーツにもつ夕凪をイメージするのですが、実際には剥けが早いと感じます。生産者によって違いがあるのか、または夕凪は早刈と聞きますが、そこに原因があるのでしょうか?

A1、ご指摘のように同じ品種であっても生産者によって、実入りの充実度に違いがあると思います。一方で夕凪は早刈り用の品種で梅雨が明ける前に刈り取りされますので、そこに原因がある可能性もありますが、このような環境でも適切な生育管理を行った生産者の製品は実入りもよく、早刈りという事だけが理由とはならないように思います。
 耐久性は基本的に裏毛の実入りに比例すると思います。い草は表皮と燈芯に分かれ、表皮の硬い夕凪の草は一見丈夫そうですが、もし裏先が平たくなっていれば、燈芯(スポンジ状)に実入りがなく、耐久性は弱いと思います。表皮より燈芯がより耐久性を左右すると思います。

 施主様には丈夫で綺麗に退色する畳表を収めたいものです。またその事で店の信用も高まるものと思います。今年は豊作と言われ、全般に草丈は長く実入は良いのですが、新芽だけで揃った草筋の良いものは少ないようです。

ご質問にある「耐久性の高い表を使いたい場合」という事で考えると、摩耗実験のデータでは、在来種よりも優良生産者のひのみどりの方が実験データでは強いという結果もあり、品種で耐久性をみるより裏先の実の充実度で耐久性をみると丈夫な敷物を選ぶと選択肢は増えるように思います。
taikyusei.jpg

Q2、畳表の最善の保存方法

A2、基本的に人も快適と感じるような、湿度があまりなくて、気温も上がりにくいところで保存されたら良いと思います。空気がよどまないように換気扇などの活用も良いでしょう。除湿機を使う場合も乾燥しすぎると表の湿度が抜けてしまってクタクタになり製品の価値も落ちると思いますので、除湿機による乾燥しすぎも注意です。
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 梱包をほどき1枚ずつ広げて保管する場合、真ん中がくぼむぐらい枚数を重ねるのであれば途中にベニヤ板などを入れた方が良いと思います。くぼんだままにしておくと、冷房を入れておいても真ん中に水分が集まって黒くなったり、カビがでる可能性もありますので注意が必要です。木造2階の漆喰の壁で囲まれた倉庫などはひんやりとして、クーラーや除湿機がなくても適度に壁が水分を吸収するせいか、1枚ずつ広げて良い保管をされているところもあります。

 また梱包のまま保管する場合、巻いた梱包であればコシが出ないのが欠点で、普通の梱包であればコシは出ると思います。これは丸めず広げた状態を保つ事で、隣どおしのい草が寄り合うのか分かりませんが違いがあるようです。そして半年に1度は上の製品と下の製品を入れ替えてやると上の俵が重石となって、同じようにコシのある製品になるとも聞きます。折りジワは納品の前日に梱包をほどき1枚ずつ反対側に水分を与えて逆方向に丸めて1日置く方もいらっしゃいます。

 ところで保管対象となる畳表もどのような製品を仕入れるかの注意が必要です。1〜2年寝かせる店に何度納品してもカビない生産者の製品もあれば、何度となくカビが出てしまう製品もあります。また製織時期によっても違いがあり、秋口の製品はカビは少ないのですが、1〜2月に製織した製品は冬の日差しが弱いために日干しで十分乾燥されていなければ、湿度が10%を超えるものがあります。また6月など湿度の高い時期は雨が続いて火力乾燥した製品は市場に出す前の水分検査では10%以下でも、日干しと違ってその日のうちに水分は戻ってしまい10%を超えてしまうものがあります。10%を超えるものは、梅雨が長ければカビ発生の可能性が高まります。
現在の熊本県の規格では12%以下となっていますが、10%以下の製品を求められる事をお薦めします。

 また長期保管するのであれば仕入れ先に相談されて1〜2年寝かせてもカビの出ない実績のある生産者の製品を指定された方がよいかもしれません。これまで1〜2年寝かせてもカビの出ない製品を生産されるところは、日干しをしっかりされるために入荷時のコシはあまりないために、「握りが柔らかい」などとコメントされますが、数ヶ月経過するとベニヤ板のように硬くなります。もちろん例外もあって技術が高い生産者の製品はコシもあってカビも出ないというところもあると思います。
 店によっては高級品は1年以上寝かせられる店もありますが、畳表に四季を経験させて次第に外気に慣れた製品は、いざ敷き込んでからの色変わりなどは少ないと思います。
寝かせる事については、研修メニューの中で触れます。様々な保管方法があると思いますが、参加者の方の色々な体験談をお聞かせ頂ければと思います。

Q3、最近は平田式の織機はあまり見かけないように思います。平田式の織りの方が、中村式の織りより傷みにくいように思っていますが、いかがでしょうか?

A:かつては様々な織機メーカーが産地にあり、麻引は中村式、糸引は平田式という傾向がありましたが、現在平田式織機の営業所は私たちの知る範囲では聞かなくなりました。かつて球磨地方が平田式が多く営業所もあったようですが、現在はないと聞いています。
現在平田式で織られている方に聞くと、違う織機屋さんでメンテナンスをされているとの事でした。
農家件数が平成元年が約5500件でしたが、平成26年は567件と約10分の1となりました。これらの減少に伴い、織機屋さんも減少し様々なメーカーが混在する状況ではなくなりました。そのため以前見かけていた平田式が見かけなくなったと思われます。
また「傷みにくい」という事においては、平田式の方が凹凸の山が低いからと思われますが、実験データを持ちあわせていないために正確には分からないところです。

【JAS規格改正のお知らせ】
平成26年4月1日よりJAS規格の一部改正となります。

◎改正点
 (1)耳毛の長さ(裏毛)
 JASの特等と2等規格において、従来より耳毛の長さ(裏毛)が1cm長くなりました。これにより、これまでより品行が若干向上すると思います。

 特等 10cm → 11cm
 1等    変更なし。
 2等  6cm → 7cm

 (2)半畳用の畳表1枚当たりの長さ
 畳表1枚の長さ+5cmから、1枚の長さ+30cmになります。
 これにより10枚連続の畳表を裁断した場合、半畳用がこれまでより取れるようになります。

 (3)重量
 JAS特等規格において、畳表1枚当たり500gの重量減となります。
 これにより、規格重量を満たす畳表が若干増えると思われます。
 (1等、2等規格においては変更なし)

以上、資料より変更点を要約しました。

投稿者西:2013年12月16日 18:20

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2013年12月12日

肥後物産通信1月号 「2014年 新春熊本状況報告」

 新年明けましておめでとうございます。現在の熊本の産地状況をまとめてみました。
参考情報として、今後の仕入れにお役に立てればと思います。

■生産状況
 農家では今月10日頃より生産が再開されています。今年は全般に長い草がとれていることから、本間類や五八麻の上級品の生産が多く、中級品から下級品の製品は例年に比べ少ない事が特徴です。
また今後、い草原料は全般に中間刈から早刈りへと移行していきますので、遅刈品種の「ひのはるか」の製品は少なくなり、ひのみどりを中心として、少しずつ「夕凪」が増えてくると思います。
 また昨年末は消費税の駆け込み需要や食材の偽装問題などで畳表においても国産の人気が高まり、市場での平均単価は過去最高値を記録しました。これらは今後需要に応じて変動していくと思われます。
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■原草の消化率と流通在庫
 原草の消化率は8月より新草に切り替わったところが多く例年より1ヶ月以上早いことから消化も進むところですが、今年は全般に豊作のため、差し引いて例年並みと思われます。畳表製品の流通在庫は11月の植え付け時期には供給が足りない状況となった事から、産地、消費地ともに手持ち状況は少ないと思われます。

■作付面積
 今年度の作付面積は2月に正式な発表があるかと思いますが、現在のところ前年比で約10%減の700~730ha(前年 801.2ha)、農家戸数は40戸減の567戸(前年 607戸)の予測となっています。高値ではありますが、高齢化による自然減が主な原因と思われます。
作付面積の減少は農家戸数の減少に加え、今年度産が全般に豊作であったため、原草の持ち越しを考えて減反された農家が多いようです。

■新品種の構成
 24年度実績はひのみどり58.3%(前年比0.4%減)、夕凪13.8%(前年比1.8%減)、ひのはるか17.0%(前年比2.2%増)、在来種11.0%(前年比0.2%増)でした。 (い業大会資料より弊社集計)
 新品種「涼風」ですが平成27年に原苗の配布、11月植付けが予定されることから、製品としての出回りは平成28年度の新草からとなります。

■畳表JAS規格の一部改正
 平成26年4月1日より、畳表JAS規格が新規格で流通することになります。
詳しくは次回に取り上げたいと思いますが、ポイントとしては、特等、2等規格において耳毛(根とうら毛)の長さが1cm長くなりました。
 これにより、これまでより長イを使用した畳表を検査する事になり、畳表の品行が若干向上する事が考えられます。

■お知らせ
・2月産地研修のご案内
 トップクラス生産者の製織作業や圃場を見学する事で品質の説明により幅を広げ、お客様への価値提案力を高める事を目的として、産地研修企画のご案内をいたしております。是非この機会に産地へお越し頂ければと思います。 詳しくは肥後物産通信12月号をご覧下さい。

・商品の保管機能を高めるため、床面コンクリ-ト補強工事をいたしました。
k_hokyou1.jpg
(断面写真 約10〜20cm厚みを増しました)
souko18cmup.jpg
これにより、雨天時の床面からの湿度上昇を軽減し除湿効果を高め、商品を一層大切に保管できると思います。

投稿者西:2013年12月12日 18:20

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2013年12月 7日

肥後物産通信12月号「2月熊本産地研修のご案内」

 い草の植付け作業も終盤となり、一部の農家では製織が再開され始めました。
 さて、今年の夏に行いました産地研修が大変好評で、施主様との見本提案時に「役に立った」との声を多く頂くことが出来ました。中には弊社見本帳の上から2番目のひのさくらクラスがよく出るようになった方もおられ、お役に立てた事をうれしく思っているところです。
 そこで多くの畳店様にも、より品質の良いものを扱って頂こうと2日間の産地研修を企画しました。今回は日数も短く気軽に参加しやすい企画となっています。研修2日目は2件の生産者を訪問予定ですが、そのうちの1件は参加者の皆様から希望があった中から選ばせて頂き、訪問してみたいと思います。よく使う生産者の製品であれば、直接話しをすることにより、自信をもった施主様へのご提案につながるのではないかと思います。是非この機会にご参加されますようご案内申し上げます。

 日程:2月を予定しています。
 募集人数:20人
 申込日:平成26年1月20日まで
 費用: 6千円(懇親会費、産地移動費他)
     ※産地までの交通費、宿泊費、食事代他は実費となります
 お問い合わせ先:詳しいスケジュールや各種お問い合わせは、お近くの畳材料商様、または弊社(0965-46-1131)まで。

◎目的:トップクラス生産者の製織作業や圃場を見学する事で品質の説明により幅を広げ、お客様への価値提案力を高める
◎内容:1、品質勉強会
      2、い業研究所、生産者の製織作業、圃場見学
◎研修場所:熊本県八代市、氷川町い草農家、い業研究所 肥後物産(株)他

◎品質勉強会について
▽狙い
 時間経過と共に、使用した畳表の退色や耐久性がおよそどのようになっていくのか、
施主様との商談時に生かせるようにします。例えば「8000円と10000円の表替え価格の場合、2000円の違いで数年後にこれだけ綺麗に退色します。耐久性もこれだけ違います」と敷き込み前の品質の見分け方について自信をもって説明出来る事につなげます。
人から聞いた話よりは、産地へ足を運び、農家や研究所から直接聞くことが自信につながると思います。そして、疑問に思う事を、い業研究所や農家にて質問してみては如何でしょうか。
taisyoku_omote.jpg

▽弊社において
 い業研究所に行く前の予習として下記についての勉強会
 ・綺麗な退色を左右する、新芽古芽について
 ・織りの綺麗さを左右する粒揃いについて(新芽と古芽、選別の間隔)
 ・白根と茶根など、根の色や太さの違いによる品質の違い
 ・耐久性を左右する裏毛の見分け方について
 ・同じ長さの草で根の長さが長いものと短いものによる品質の違い
 ・寝かせた表と織りたての表のそれぞれの長所と欠点、事例について
 他
sinme_furume.jpg
benkyoukai.jpg

▽い業研究所において
 ・新芽だけで織った畳表、古芽だけで織った畳表サンプルを見て、退色の違いを観察します。
 ・1年寝かせて織った畳表、その年に織った畳表へ部分的に水分を与え,変退色の程度を見ます。そして寝かせる事と品質の関係について観察します。
sikenjyou.jpg
sikenjyoukensyuu.jpg

▽生産農家において
 ・品質の良いい草をつくるためのポイントなど、直接農家に聞いてみてください。
 (皆様がいつも仕入れておられる農家など、行かれたい農家にあたってみます。特に指定がなければ、トップクラスを生産する農家にご案内予定です)
noukakensyuu1.jpg
 ・生育中のい草を観察
hojyou1.jpg

投稿者森岡:2013年12月 7日 17:56

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