2003年11月27日

肥後物産通信11月号 品質についての質問

【産地状況】
現在、産地ではイ草の植え付けが始まっており、12月中旬まで植え付け
作業が続きます。そのため、織機が止まり農協の出品枚数も少なくなっ
ております。

【品質についてのご質問】
Q:宮城で畳店を営む者です。いつも拝見しています。質問させていただ
きます。9月以降、製織された表が良いということですが、毎年、新草か
ら一、二ヶ月はどうしても品質が良くないように見えてしまいます。年
を越してからは割と品物が良くなってくるように毎年感じます。中国、
国産問わず、そんな感じがするのですが、染土とイグサの馴染みなどの
関係なのでしょうか。
(11月にホームページより投稿頂きました)

A:彼岸を過ぎてから製織された畳表がいつ頃入荷されるかは、流通経路
の関係でそれぞれに時期が違うとは思いますが、「年を越してからは割
と品物が良いように毎年感じる」というのは色合いに関してはそうかも
しれません。「染土とい草の馴染み」とも言えるかもしれませんが、い
草そのものが少し時間が経ってからがいろいろと馴染むのではないかと
思います。

私たちの産地内部では彼岸から彼岸の間に製織された表は良いように感
じていますが、湿度が少ない冬場に製織された畳表はくすんだ色も少な
く、色合いに関しては特に澄んだような色が出る頃かもしれません。
ただ空気が乾燥しすぎてカシ(織機にかける前にい草に湿気を与える作
業)が難しいという農家の声もあり、それがうまくいかないと織りに関
してざらついたような感じに仕上がる事もあるようです。

またこの頃(1~3月)は中間刈りの草が主流となります。
4月以降は早刈の草が主流となりますので、全般に品質は落ちると思い
ます。ただ全てがそうではありませんので、中にはこの時期でも素晴ら
しい畳表もあります。

**********(下記は参考までです)**********
「 新草から一、二ヶ月」(8~9月)は8月号に記載した通り、イ草
(新草)自体もまだ、材木でいう生木の状態と考えます。
この頃(8~9月)は古草で織った表が価値があると思います。
植物を加工するには時間がある程度たってからが良いと思います。
例えれば材木は生木を切ってすぐに家を建てたりしませんし、桐タンス
もそうだと思います。

この頃(8~9月)の表を選別していますと、ほとんどが湿度が12%
近くまであがります。彼岸を過ぎれば、選別時の湿度計の針は動きませ
ん。そのため自社の選別では湿度がこの頃を境に12%から10%(目
盛の起点は10%から)へ変わります。
夏場の12%ある新表は、時間の経過と共に色がくすんでしまうように
思います。温度・湿度ともに高い残暑も9月下旬になるとある時期から
朝からさわやかな北風に変わります。この頃がおよそ彼岸になります。
さわやかな北風に変わってからが、新草を織り始めるのによい時期のよ
うに思います。(8月号も参考までどうぞ。)

これらの事から、年内は古草で織った畳表を使用し、年を越してから新
草の表を使用された方がいいように思います。

各地で行われる秋の展示会では多くの畳屋さんとお話をさせて頂きます
が、その中に毎年秋に本間と五八の最高級品をそれぞれ一口仕入れて翌
年の4月まで寝かせる方がいらっしゃいますが、この方も年内は国産の
新草は使わないそうです。保管は倉庫の二階で、俵をほどきビニール等
に入れないで、そのまま一枚ずつ広げてベニヤ板を間に入れて保管され
るようです。地域によっては10枚織りされた俵をそのまま積んで、定
期的に上の俵と下の俵とを入れ替えて、上の俵の重さによって生地の締
まりができるようです。
いずれの方法でも、少しずつ外気に慣らすことで敷き込んでからのさま
ざまな問題が少なくなると思います。当然、畳表の色は落ち着いた色合
いになりますが、それは材木と同じ原理ではないかと思います。

参考まで茶道の世界では、5月に摘まれるお茶は11月をその年の茶壺を
口切りする「お茶の正月」*といわれるそうです。
また前年の11月から使い 続けてきた茶壷のお茶も残り少なくなる10
月は「名残の月」と言われるそうです。
畳表にあてはめると、名残の月はお茶より遅れること2か月後の12月
になるのでしょうか?

***************(参考)***************
「名残の月」
茶道の世界では 10月は名残の月で去年の11月から使い 続けてきた
茶壷のお茶も残り少なく 初夏のころから使ってきた 風炉から 炉へ移
りかわる月です。

「お茶の正月」
11月は茶家の正月といわれ5月に摘まれ乾燥させた抹茶の原葉 碾茶は
知恵と努力で熟成させ 新茶を賞味する口切の日を待ちます。
「その年の新茶の入った茶つぼの封を切り、客に初めてふるまう茶事を
「口切り」といいます。
正式には初めに茶つぼを拝見し、後座の濃茶・薄茶に新茶を頂きますの
でお茶の正月ともいわれております。
茶家が差し出したつぼの中に濃茶・薄茶を詰めて茶師が封印しますが、
近頃のように取りたての新茶をすぐに飲むのではなく半年間寝かせるこ
とにより熟成し、より豊潤な美味しい茶になると聞いております。
私達の日常や稽古においてもある意味、同じように感じる時がありま
す。」
(下記ホームページより抜粋)
茶道 1 2

投稿者松永:2003年11月27日 11:57

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