2004年7月16日

肥後物産通信7月号 加工への質問

【産地状況】
熊本では11日に梅雨明宣言がなされ、イ草の刈り取り作業は
残すところ遅刈のみとなりました。
今年のイ草 の生育は、前半に花付きが目立ちましたが、そ
の後の新芽の生育により、古芽の花は目立たなくなりました。
草質は空梅雨の影響か、早刈草も硬い草が取れているようで
す。気になるのはイ草の長さで、早刈りは全体的にまずまず
の長さでしたが、7月以降の中間刈り、遅刈りのイ草の生育
が思うように伸びず、短い作柄になりそうです。
参考までに、日中の気温が約30度以上になるとイグサは成長
を休止する為、今後の伸びはあまり期待できないようです。
市場の出品は、イ草刈りのため畳表の生産が止まってお
り、 休市が多くなっています。

【頂きました質問より】
4月号の内容について、配信メンバーの方より、質問のメールがありまし
たので、お答えしたいと思います。

(先号内容一部)
「早刈りの草は表皮が柔く、へり際が白っぽくなっているの
が特徴です。しかし産地における加工によってはこれらの草
の欠点を水性ペンキとボンドによって、表皮はボンドによっ
て堅くなり、へり際もすっきりした緑色に仕上げる事が出来
ます。」

◆Q1.今時そのような加工は、農家がこっそり行なって何
食わぬ顔で市場に出すのでしょうか?それとも問屋が出来の
劣る表を安く競り落としてからこっそり加工して、畳屋にそ
こそこの値段で売るのが一般的なのでしょうか。

A.ご指摘の通りそのような面がこれまでは一部であったと
思います。ただ近年は産地とユーザーの皆様との情報交換が
進み、本物を求める声が多くなることに比例して、下級品を
よく見せかけるさまざまな加工は減りつつあるように思いま
す。1つ大切なのは仕入先との信頼関係であるように思いま
す。これからは加工していれば「加工品」として仕入れの時
に分かる仕組みが必要かもしれません。

このような問題が起こるのは、1つに、よく見せかける技術
が発達し、産地でこの技術をどこで使おうと、ユーザーの皆
様には見えない流通の仕組みにあったように思います。従っ
て、「よく見せかける技術を使ったところが栄え、そうでな
いところは、萎んでいく」このような事を繰り返していたの
では、産地として栄えないと私たちは考え、また、これまで
の産地にいるものとしての情報発信が不足していた事を反省
し、このような情報発信をさせて頂いております。

産地全体としましても、現在でも「色が青い畳表を」と要求
される方もいらっしゃいますので、このような要求に応える
ため着色をされる方もいます。また説明し理解して頂くこと
で、無加工で通されている方もいます。ただこれは思います
に、このような情報交換や対話を進めれば、青色を良しとす
る価値観は変わるように思います。

材料商様のご協力のもと、現在約200件の皆様に発信、そし
てこのような対話をさせて頂いておりますが、出来ることな
ら更により多くの方々に産地のことを知って頂きたいと思っ
ております。

▼参考
◎市場における表示について
市場によっては、着色表、無着色表と分かるように、無着色
表にはラベル等を付けて区別するようになされています。ま
た市場を通さない農家の製品もオリジナルのラベルで無着色
を表示しています。

◎着色加工の過程
(生産農家)
・イ草の泥染めの時に、染土と共に着色剤を水槽に入れイ草
 を染めます。
・その後乾燥機で乾燥します。

(産地問屋)
・緑、白の水性の塗料にボンドを配合し、水に薄めます。
・白口にしたければ白の塗料を、青口にしたければ青の塗料
 を多く配合します。
・霧状にして製織された畳表に吹き付けます。
・その後乾燥機で乾燥します。

着色表は色が青く、縁もスッキリとした緑色になっています
が、それはイ草の品質が悪いのを着色で隠しているわけで、
拭き取りした場合などにイ草本来の品質が見えてきます。
良質なイ草でしたら着色しなくても、イ草に力、粘りがあり、
縁際までスッキリとして綺麗な飴色に退色します。

◎これまでなぜ着色加工してきたか?
(生産農家)
・草質の品質上落ちる部分(枯れの落ち・ヤケ等)を隠せる
・田圃ごとに草の色が違う点を均一にできる

(産地問屋)
・商品価値が落ち、安く落札できたものをよく見せかけ販売
 出来る
・色調を揃えることによって、ロットを大きくできる
 等の利点が考えられます。


以下、Q2の内容につきましては来月号に載せたいと思います。
Q2.一般に早刈りの草が劣ることが分かっているのであ
れば、なぜ収穫を遅らせないのでしょうか?あるいは、早刈
りを始めから意図した栽培が行なわれているということでし
ょうか?(6月号に早刈りの圃場と遅刈の圃場の写真が載せら
れていたので)であればそれは何のために?

投稿者松永:2004年7月16日 11:33

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