2013年5月 7日

肥後物産通信5月号 「熊本産地研修前のQ&A」

 産地研修を今年度初めて企画しましたが多数申込みを頂きありがとうございます。
申込書にありました質問の項目でいくつかご質問頂きましたのでお答えします。
十分な回答でないかもしれませんので、不足する分は来社時にまた詳細にお答えしたいと思います。

Q1、い草生産時に何回も株分けを行ったり、い草を切ったりする理由は?
A1、株分けを行うことで苗の増殖準備をします。
  また先刈は根本に太陽の光を与えるために先刈を行います。
  参考までに下記のアドレスにビデオがありますのでご参照下さい。
  http://www.higobussan.co.jp/kumamoto/igusa_video.php

Q2、折目ではない線がよくついています。原因は何か知りたいです。
   (光のあたり具合によって、キズのように見えてしまいます)
A2、斜めの織ジワの事と思いますが、これは通常、製織後に日干しを行いますが、生産者によってはその日が雨などであった時に、外で干せないために織機から織り終わった畳表をヒモで結んだままにしまう事が原因の1つと考えられます。生産者によって保管の方法が違うために、折ジワのでるところとそうでないところに別れます。このような事から優良生産者指定の購入割合が増えているように思います。

Q3、使用途中、畳表の色が変わっている事があります。原因は?
A3、1枚の中で途中で色が変わっている事であれば、生産者によっては1枚の途中で製織をやめて、翌日にまた織り始めた時に、例えば前日が晴れて当日が雨などと天候が違う事で起こる事が考えられます。ほとんどの生産者がきちんと区切りをつけて織り終わったりされていると思いますが、ごく一部である事かもしれません。

今度の産地研修で訪問する生産者の1人は、その日の仕事の最後には、短いい草を使って織機から製織した製品を送り出し、織機に畳表が織りかけのままにならないようにされています。
織機から外された製品は専用の保管庫に入れられ保管されます。このような品質管理をされているところは安心して使用することが出来ると思います。このような品質管理の違いから同じランクに見える畳表にも価格差がでていると思われます。
<1枚途中変色を防止する完成品を送り出すござ>
途中変色防止01.JPG
Q4、ブランド畳表を(新、古、退色後)見分ける事ができますか?
A4、その畳表が新草なのか、古草なのか、の見分けがつくかという質問であれば、8月に新草が織られれば、草の色合いや匂いなどで、およそ見分けはつくと思いますが、収穫後半年以上経て織られるものは、生産者から聞かないと弊社では見分けがつきにくいのが現状です。
選別をしないで黒ビニールで保管された前年度産のい草を例えば翌年の1月に選別して織られたものは、1年以上経ても実入りが良い草は新草と遜色ないように思います。一方で、例えば平成23年産のように全般に根白で柔らかめの草という特性で24年産と大きく特徴が違えば「これは23年産では?」と思う事はありますが、正確には生産者からの情報を元にしています。

Q5、ブランド畳表をお客様の目線で説明する時どうしたらわかりやすく説明出来ますか?(見た目、耐久性、品質基準など)
A5、弊社でお勧めしているのは、熊本の卸組合が作成した見本帳の活用です。弊社の場合には、これに「ひのさらさクラス」から下級品まで現物のカットサンプルを入れていますが、これに品質の違いを説明するパンフレットも入れています。これに沿って説明されたら分かりやすいのではと思います。
他にも方法はあると思いますが、何件かの「ひのさらさ」クラスをよく使われる畳店様にお尋ねすると、例えば「工務店に見本帳で説明した」と答えられたり、「見本帳を活用してからさらさクラスの在庫が出来るようになった」などと声を頂いております。

品質の違いの説明は施主様に合わせて色々な角度からでも説明出来る事が望ましいように思います。
畳の品質は一般の消費者には分かりにくいものですが、他業界をみると例えばスーツの品質の違いも分かりにくいかもしれません。
高級スーツ売り場の店員さんに質問した事がありますが、この時は「長い繊維で織り込み密度のあるものが高級品です」また「繊維でも密度のあるもので、長くて織り込みの多いものです」と答えられていました。これらの商品は年数がたってもクタクタにならないで、いつまでもシャッキしているものなのでしょう。
品質の違いを質問した時に、これらの説明に自信ももって答えられていましたが、畳表の品質の説明にも同じ事が求められると思います。産地に行って高級品を生産する人から直接話しを聞いたり、その人の仕事の一部を手伝う体験は、これらの説明に幅を広げ、説明を聞く人にもより伝わりやすくなると思います。是非今回の体験研修がこのような事に結びつけばと思います。

Q6、最高級ブランド畳表は、絶対に黒筋ははいらないのですか?
 (黒筋は入りにくくなります)というのは確率データはありますか?
A6、絶対に黒筋が入らないとは言い兼ねますが、新芽で質の良いい草で織られた畳表は黒筋が入りにくいと思います。
データに関しては、平成4年に熊本畳表銘柄確立研究会(熊銘会)が発足した当時、トップクラスの生産者の人たちと共に、い業研究所に行って新芽・古芽の勉強をさせて頂きました。当時は今のひのみどりなど新品種はなく在来種しかありませんでしたが、黒筋の入る原因と入らないための栽培技術について、当時の加工部長さんと様々なデータやサンプルを見せて頂きました。
当時の新芽・古芽のサンプルは、出てきた一つ一つの芽をこれは何番目の芽、これは何番目の芽と手作業で分けて、これらを集めて、1番目の芽だけで織った畳表、2番めの芽だけで織った畳表、・・・といったサンプルがありました。この時点で10年以上は経っているのかと思うくらい退色していましたが、5番目以降の新芽には、黒筋は1本もありませんでした。以下はその当時の写真です。
sinme_furume.jpeg
写真の左半分が新芽ですが、写真で少し黒く見えるのは、い草が抜けて空洞になっている部分が黒くみえる部分です。現在はこの当時のサンプルは残念ながらないようですが、現在のサンプルは手作業でのサンプルではなく、色彩選別機を使ったサンプルのようで、手作業ほど正確でないのですが、傾向はわかるサンプルとなっています。
い業研究所には、このようなサンプルがあるので、是非今回の研修で実物を見て頂きたいと思います。

また生産者によっては、「黒筋は古芽でも入らない」という方もいらっしゃるかもしれません。新芽や古芽は人の肌に例えると若い人の肌や年配の方の肌のようかもしれません。年齢を重ねても黒いシミのようなものが出ない方もいらっしゃると思います。栽培技術が高い方は、このような古芽でも黒筋になりにくい技術をお持ちと思いますが、ここでは、一般的な傾向として黒筋の因果関係をみて頂ければと思います。

Q7、在来品種の畳表(い草)の香り」の違いの差があるのはなぜ?品物によっては香りがキツく良い香りと感じないものもある。染土の違いだけなの?
A7、基本的に無着色の畳表であれば、香りはほぼ同じではないかと思います。染土は天然の泥ですので、これだけであれば香りに違いはあまりないものと思います。
無着色であるか、何か添加剤は使っていないか、詳しくは購入された問屋さんや問屋さんを通して生産者に聞いてみた方がより正確にわかると思います。

またご質問がまだなかった方も、是非この機会にどんどん質問して有意義な研修になるようにしましょう。

投稿者森岡:2013年5月 7日 07:40

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