2013年6月11日

肥後物産通信6月号 「続 熊本産地研修前のQ&A」

産地研修前の質問で引き続き頂いておりますで、掲載させて頂きます。

Q8、最近の畳表はカビが生えやすいと感じています。
気候変動で湿度が上がっているとは思いますが、個人的な勝手な考えですが、昔に比べたら農薬の使用量、種類が変わってきたからではないかと考えます。しかし全く根拠は無く確証もないのでもし、御社で、何かしら要因がわかるのであれば考えていただきたいと思います。

A8、保管時のカビということであれば、製品である畳表製織後の湿度が10%以上になっているか、保管時の湿度管理が考えられます。
購入時に湿度を確認される事もカビ防止の1つの方法と思います。
(参考まで製織後の湿度は熊本県の基準では12%以内となっていますが、実際は10%以内でないと梅雨時期は何かしら品質に影響が出やすいように思います。
弊社では、入荷時、商品の湿度を測って記録し、ネットでの在庫に表示していますが、ほとんどの商品は10%以内となっています。天気が悪い日が続くと12%を超える商品がありますが、これらは自社で日干しを行なって10%以内にして保管するようにしています。)

敷き込み後のカビという事であれば、1世帯当りの人数が少なくなっている事で、閉めきった部屋が増えている事が関係しているかもしれません。
敷き込んでからのカビの発生原因と対処法などについては、下記のページを参考までご覧ください。
http://www.higobussan.co.jp/tips/220/aircon.php

なお、農薬とカビの関係は上記のページにもある通り基本的にはないと思われます。
また使用される農薬については、熊本県のい草耕作基準に沿って使用されていますが、農薬の種類などは安心安全に沿って、年々改良されたものが使用されていると思います。

Q9、ひのみどり種と在来種の違い(長所、短所等)を詳しく教えていただきたいです。
A9、:ひのみどりの長所は在来種に比べ
 ・草が細いので目のつまりが密であること
 ・草粒の揃いが良いこと
 ・着花が少なく、下級品まで加工しやすい事
があげられます。一言で言うなら品行の良い製品に仕上がることだと思います。
欠点は草が細く、耐久性が劣る傾向です。
この欠点は本数を織り込む事でカバーをするという事で当初は開発されました。

 在来種の長所は耐久性や変退色などに新品種より強い傾向にある点と思いますが、欠点はヤケが入りやすい事があげられます。そのため着色でヤケを隠す処理をされるところが一部であるかもしれません。在来種の育成は技術がより必要で、無着色の在来種は価値があると思います。

品種の特性としては上記の通りと思いますが、それ以上に生産者により収量を求める作りと、質を求める作りとで特性に開きがあるように思います。

参考まで下記はみどりの特性について触れたものです。参考まで御覧ください。

高級畳表に向く「ひのみどり」の加工特性
http://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/47111.pdf

いぐさ「ひのみどり」の茎伸長特性について
http://qnoken.ac.affrc.go.jp/qnoken/no63/63-019.pdf

弊社通信 ひのみどりQ&A
http://www.higobussan.co.jp/blog/2007/06/6qa.html

(参考情報)
 品種の特性については、現在流通している製品での特性と、本来の品種の特性とでは、違う面があると思います。ひのみどりは平成10年に実験段階で一部の農家で生産され、当初は品質重視で量があまりとれない栽培方法であったと思います。収量はとれませんが、品質が良く単価が高い事で、中国との差別化を図る方向だったと思います。そのため耐久性も当初の製品はそれなりにあったと思いますが、単価が高いことから多くの生産者が作るようになり、収量を求め軟弱な草が増えました。
 品評会で受賞するひのみどりクラスであれば耐久性は在来種に負けないと思いますし、生産者によっては摩耗実験などで在来種より強い結果を複数年にわたって出しているところもあります。しかし品質重視のつくりは収量が少ないためにその製品が正当なな評価がもらえないと反収が少なくなってしまうために、収量を求めた栽培方法が増えたのだと思います。正当な評価が得にくい1つはヒゲの長さで品質が評価される傾向があるからかもしれません。これは産地側の情報発信不足でこれからも私たちが努力しなければいけない点です。
 参考まで、自宅のよく人が集まる和室は4~5年に1回表替えを行いますが、1つの部屋に、これまでも違う品種や違う生産者のものを敷いてきました。みどりでも耐久性がありツヤツヤし皮むけもほとんどなく、一方、在来種といえどもツヤのないものになっているものもあります。 耐久性のあるものを選ぶ物差しとしては、品種もいいのですが、草質の良い物を選ぶ事ではないかと思います。

Q10、最近の代表的な品種(ひのみどり、夕凪、ひのはるか)についてそれぞれの特徴(長所、短所)や農家サイドで品種ごとに生育などで気をつけている点などあれば教えてください。
A10、品種の特徴では、ひのみどりは上記の通りです。
夕凪の長所は硬質な草質になる傾向で、短所としては草が太く、下級品になると着花があるため、ひのみどりに比べれば品行が劣る傾向があると思います。
(夕凪の詳細情報)
http://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/47572.pdf

ひのはるかは、ひのみどりの長所に合わせ、裏毛が在来種のように太めで強い事を合わせ持っている事だと思います。欠点はもともとが柔らかい草質のため遅刈用として位置づけられますが、平成23年産のように早めに梅雨があがれば夕凪のように硬質の草になりますが、平成24年産のように梅雨明けが遅ければ少し柔らかめの草質になるなど、7月の天候で品質が左右されやすいように思います。
(ひのはるかの詳細情報)
http://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/64185.pdf

参考まで品種の掛け合わせの原種は、
 ・ひのみどり:宮城県の在来種「下増田在来」✕「せとなみ」
 ・夕凪:「いそなみ」✕「沖縄太い」
 ・ひのはるか:「熊本3号」✕「広系21002」
です。

品種ごとに生育などで気をつけている点としては、それぞれにあると思いますが、基本は品種に合わせた適期の刈り取りに気をつけるべきと思います。また、更に研究熱心な農家では、短所はどのようにすれば克服できるかを研究し、そのための方法を実践しているところもあります。柔らかければ硬くする成分は何か?どれくらいの量をどのタイミングでやるのか?
これらの研究を行い、実践している農家は品種の短所を最小限にしていると思います。

Q11、最近では夕凪、はるかを「在来」と呼ぶ人が増えているが、線引きなどはあるのか? 
A11、基本的に夕凪、はるか は新品種で従来からある品種ではないのですが、在来種の作付面積が約1割と少ないため、草の太さが近い夕凪、ひのはるか を「在来」の代わりとして購入される傾向です。しかし弊社では梱包表示などには正確に品種名を表示して、在来種とは区別して販売していることろです。
参考まで、平成23年度の作付品種構成は、ひのみどり58.7%、夕凪15.6%(前年比0.8%減)、ひのはるか14.8%(前年比1.1%増)、在来種10.8%((岡山3号、きよなみ他)でした。

Q12、肥料の種類において表れるイグサの育ちの違いは?有機質・化学肥料での違い。
A12、肥料の種類という事であれば、品質の高いい草を栽培される方に多くみられるのが、ボカシ肥料(油カス、米糠、鶏糞、魚カスなどの有機肥料を発酵させて肥料が作物の生育に与える効果をおだやかにしたもの)を使われているように思います。5~6月の田んぼをみると、明るい黄緑色のい草がその傾向にあり、一方で量を取ろうとしてチッソ成分の多い肥料を多様した田は、濃い黒っぽい緑色のい草の傾向にあるように思います。
緑色の濃い畳表が好みという方には合うかもしれませんが、実入りがもうひとつという傾向だと思います。実入りのあるい草は明るい黄緑色ではないでしょうか。

有機質・化学肥料での違いという点では、有機質は実入りを良くし、化学肥料は伸ばすという質の違いがあるのではないでしょうか。一方で有機質をただ多くすればいいかと言うと、人に例えれば栄養が多すぎると糖尿病になるようにバランスが大切だと思います。

参考までに、平成の初期に有機肥料だけで栽培に挑戦された方がいらっしゃいました。一般に化学肥料がないと伸びないといわれる中、有機だけで成功されました。
この時は、何度も田に行って草質の硬い事を確認した次第ですが、これらの製品を軌道に乗せるには投入されたコストや労力に見合う価格設定とその価値を認めて頂ける情報発信が必要ですが、当時はうまく出来ず続きませんでした。

Q13、農薬とアレルギーとの関係性は?
A13、私たちが把握している限り、熊本県の耕作基準に沿って栽培されている熊本県産については、人体を害するレベルで農薬は検出されておりませんので、い草に農薬が残っていない状態でのアレルギーとの関係性は直接はないと思われます。
アレルギーについては個人差があるので、農薬なのか、他の物質なのかは専門家の意見が必要に思います。

(残留農薬データについては下記ページ下段を参照ください)
http://www.higobussan.co.jp/company/contact/index.php

Q14、窒素化合物をイグサが吸着した後放出されないのか?
A14、この件については、い業研究所を通して専門機関に聞いて頂きました。
それによると、ある一定レベルまでは吸着しますが、飽和状態になると吸着できなくなるそうです。そして環境条件によっては、吸着したものを一部放出する可能性もあるとの事です。ただこの専門機関もそこまでのデータはないそうです。

Q15、○番毛の見分け方はあるのか?(自己申告制なのか?)
A15、その草が1番草なのか、2番草なのかは基本的に農家の自己申告で私たちは把握しています。
参考まで弊社のネット在庫での表示もそのようになっており、市場での商品は把握ができず「0」が表示されています。

Q16、畳表の品質を保持するために一番いい保管方法とはなにか?
A16、保管については、基本的に湿度が少ない2階などで保管される事が良いと思います。
これまで畳店様の保管を見学させて頂いた中で、木造2階、漆喰の壁で保管し、1年かけて販売されていた店がありました。1年寝かせる事で製品も四季を経験し、徐々に外気に慣れて、いざ敷きこむ時は既に外気に慣れているので、敷き込み後の退色もなだらかで、変退色などの問題も少ないと思われます。
出来立ての品質を保持する事を目的とした保管方法と、施主が使うシーンにおいて最高の品質になる保管方法という点では、その方法は違ってくるように思います。
ここでは、どちらかと言うと後者の保管方法です。

(参考情報)
産地での保管方法については、現在い草を刈り取ってから品質保持という事で、黒ビニールに入れ、畳表製織後も黒ビニールに入れ、それからすぐ完成品として使われるようになってから、マダラ変退色などの問題も増えたように思います。
ホテル、旅館の大広間でこれらの問題が発生しやすく、緑色の色味を保持するために、外気に慣れることなく、いきなり敷き込むとで問題が発生しやすく、この事が現在い草以外の素材が使われるようになった一因があるように思います。
これらの保管の問題については昭和63年の「マダラ変退色報告書」でも指摘されていますが、ここでは変退色を最小限にするには「黒ビニールの保管は避けるべき」とあります。
しかし市場では青味のあるものが高く売れるので、袋に入れない保管方法はほぼ姿を消したと思います。

平成の初期まで熊本でも黒ビニールを使わないでい草を保管されで製織されていた生産者がありました。弊社もこの考え方に共鳴して販売していましたが、市場のほとんどが青味のあるものを求められ白口は受け入れ難く平成10年ほどまでしか続きませんでした。

施主にとって良い製品保管は、緑色は多少白口になりますが、湿度の少ない2階で徐々に外気に慣らす保管方法がいいのではないでしょうか。
参考まで下記は畳店様を紹介される材料商様のページですが、この地区は寝かせて使用される店が多いと思います。
http://www4.ocn.ne.jp/~hayakawa/sub3.htm

以上が頂いた質問です。多くの質問を頂きありがとうございました。取り急ぎまとめましたが
十分ではないかもしれません。質問に対して違う見方も当然あると思います。私たちも謙虚に違う意見をお聞きしたいと思います。
産地にいらっしゃった時は研究所や農家にお尋ねして、お互いに幅広い知識を身につけられればと思います。お待ちしております。

投稿者松永:2013年6月11日 12:25

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